2016年の終わりに、今年の年末らしいことを少し書いてみようかなあ。
そんなことをぼんやり考えて、今年あったことを思い返していくうちに、ふと書きたいと思ったのは意外にもSMAPのこと。特別ファンなわけでもないのに。
実はこの数日間、「世界に一つだけの花」が頭の中でぐるぐるとまわって離れません。そんなひと、多いんじゃないでしょうか。
年内で解散する国民的アイドルグループ「SMAP」のことについて、先日放送されたSMAP×SMAPの最終回を見た感想などをからめながら、いろいろと綴ります。
昭和が終わり、その後の新しい時代を一緒に作ってきた「SMAP」
今年(2016年)の年明け早々、びっくりするようなニュースが飛び込んできましたよね。
それは、SMAPが解散するというもの。
特にSMAPのファンというわけでもなく、芸能ニュースにもそれほど興味がないわたしですら、とても衝撃を受けました。
「あのSMAPがとうとう解散か…。」
メンバーそれぞれが既におじさんと呼ばれる年齢になっていたり、またメンバー同士の関係性や、彼らが仕事ととしてアイドルを続けていることをなんとなく知ってはいました。
ただ、SMAPはいつまでも解散はせずに、ずっとSMAPとしてそれぞれが芸能活動をするのかなと漠然と思っていたのです。
解散だなんてほんとなのかな、SMAPでなくなってしまっても大丈夫なのかな、結局はまた元の鞘に収まるんだろうな…。そんなことを、熱心なファンでもないのに、初めの報道からしばらく考えていました。
ですが、夏には正式に年内での解散が発表され、それから2016年が終わろうとしている今まで、なにか一つの時代が終わるような切ない気持ちを心の隅っこに抱えながら、この年末まで過ごしてきたように思います。SMAPが解散するからといって、わたし個人のいつもの生活が変化するわけではないのですが。
実は、中居君やキムタクとほぼ同世代のわたしは、SMAPの28年間をリアルタイムで見続けてきました。
グループを結成したころのSMAPは、なんだかあまりパッとしない男の子たちの集まりで、「最後のスーパーアイドル」なんていわれるきらびやかなグループ光GENJIの後ろでスケートボードに乗ったりしていました。
歌を歌えば音痴だし、あんまりカッコよくもないし、けどたまにテレビやアイドル番組にでていて、いつの間にか人気者になっている、SMAPはそんなグループでした。
当時のわたしは、元々アイドルには興味もなく、自分自身が大学生・社会人として忙しくしていたので、SMAPという人気上昇中のアイドルグループがいることはもちろん知っていましたが、ジャニーズの一グループというくらいの認識しか持っていませんでした。
SMAPの中で唯一、頭が小さくてスラッとしてかっこいいからという理由で推していた森君は早々に脱退しちゃうし。
その後、時代はバブル崩壊後の不景気な時代に突入。音楽番組もどんどんなくなり、それまでのアイドルが活躍できる場が急に少なくなりました。
女の子のアイドルはバラドル(バラエティーアイドル)なんて呼ばれて、歌は二の次、ほぼバラエティー番組が露出の場でした。そしてそのままいわゆるタレントと呼ばれる立場に落ち着き、アイドルではなくなっていきます。
SMAPも、今思うと男性版バラドルだったのかもしれませんが、SMAPはあくまでもアイドル。年齢は重ねても、歌を歌ったり、女性ファンの気持ちをつかんだり、そういうところはずっと変わりません。
そしてバラドルであるがゆえに、グループ、メンバーの一人一人が、女性ファン以外にも広く認知されていき、それはそれまでのアイドルとは大きく違う、SMAPから始まった新しいアイドルのかたちでもありました。そのかたちこそ、SMAPが今まで28年間もアイドルグループとしてずっと続いてきた大きな理由なんだと思います。
世界に一つだけの花:薄っぺらく感じていた曲
さて、SMAPがデビューして15年ほどがたったころのことです。
キムタクがロンバケに出てキムタクというブランドを確立したり、スガシカオの「夜空ノムコウ」というそれまでのアイドルにはないちょっと後ろ向き(だがそこがいい)な歌詞の歌を歌ってヒットさせたり…。
グループの個性をうまく生かしてすっかり国民的アイドルグループとなっていたSMAPですが、相変わらずわたし個人としては、「SMAP、がんばってるな~」くらいの感想で、実はロンバケだって一度も見たことがないという生活でした。というかSMAP×SMAPも実は今まで一度も通しで見たことがありません、ほんとすみません。
そんなわたしが唯一見たSMAPのメンバーが出ているドラマがあります。
それは草彅くん主演の「僕の生きる道」。
事なかれ主義で適当に毎日を暮らしていた若い高校教師の主人公が、進行性のガンで余命一年と宣告され、残りの人生をどう大切に過ごしていくか、ということが描かれたドラマです。
これまたアイドルらしからぬ設定の役どころで、どんな感じなんだろうと興味本位で見始めましたが、結局最後まで欠かさず見てしまいました。
主人公がガンで死ぬという設定が「いくらなんでもアザトイ!」なんて思ったり、あまりにもきれいごとすぎないか…という展開ではありましたが、逆に言えば、現実的に発生するであろう様々なごたごたを一切排除して、主人公が残りの人生をどう過ごそうと決意して生活していったのか、周りの人がそれをどう支えたのか、ということのみがシンプルに描かれていました。
放送されたのは2003年ともう10年以上前のドラマですが、今でもふと印象的なシーンを思い出したりします。主人公は、かわいい奥さんをもらって余命わずかながらも夢のような楽しい日々を過ごすのですが、温泉旅行で混浴しながらふと「死にたくない」と漏らすシーンなんか、思い出すだけで泣けますね。
そんな「僕の生きる道」というドラマの主題歌があの「世界に一つだけの花」でした。
淡々ととにかく美しく進んでいくドラマと、最後に流れる「世界に一つだけの花」。当時のわたしは、実はどうにもモヤモヤした気持ちを抱えながらそのテーマ曲を聴いていました。
メロディーはとても親しみやすく美しいのに、歌詞がどうにもこうにも受け付けなかったのです。
人それぞれ、違った魅力があるのだから他人と比べたりせず、自分らしくいればいいんだよ、というとっても素敵な歌詞。素敵なのはわかるんだけど…なんか違う!
ドラマの少し浮世離れした雰囲気もあったのでしょうが、ドラマの最後にこの曲がかかるたび「現実はそんなに甘くないのでは…?」とモヤモヤモヤモヤしていました。
その後、大きなヒットとなった「世界に一つだけの花」ですが、その歌詞については賛否両論ありつつも、大勢が無条件に「素晴らしい!」と受け入れられていった風潮も、個人的には少し気持ち悪くもありました。耳障りのいい言葉に日本中が染められていく様子が怖くもありました。
ただ、作曲をした槇原敬之さんは、当時表舞台から姿をしばらく消していて、久しぶりに聞いたマッキーのメロディーはやっぱり素晴らしいし、歌詞だって素直に読めば素晴らしいし(ちょっとマッキー疲れてんのかなとは思いましたがw)、するすると頭の中に入ってくるし、やっぱりマッキー最高! とSMAPと同じくマッキーと同世代で尚且つ同じ大阪北摂出身の人間として、単純にお気に入りの曲ではありました。
SMAPが最後に伝えたかったこと
今年の年明けの解散報道ののち、夏に正式に解散することが発表され、その後、最後のSMAPのステージが12月26日のSMAP×SMAPの収録ライブであることがわかりました。
そして、そのときに歌われるのは「世界に一つだけの花」。
数あるSMAPのヒット曲の中でもラストソングとしてふさわしい曲ではあります。
ですが、上で書いたように個人的には歌詞が薄っぺらく感じることもあったり、また、解散の理由が結局よくわからず、様々な憶測が飛び交う状況。
日本中が無条件に大好きだった、その一曲だけを歌ってSMAPを終わりにするんだなあ、と正直寂しく感じました。
ですが、何度も書きますが、SMAPのファンでもなく、SMAP×SMAPを一度も通してみたことのないわたし。SMAPが解散してもおそらく今後の生活に大きな変化はないはずです。
ただ、この28年間、知らず知らずのうちに生活の中にいたSMAPの最後のステージだけはとにかく見たいな、と思いました。おそらくSMAP×SMAPの最終回を見た人たち、ほとんどがそんな気持ちでチャンネルを合わせたのではないでしょうか。
そして、約5時間にもわたるSMAP×SMAPの最終回。
そのほとんどの時間は、これまでのSMAP×SMAPの総集編というものでした。
総集編とは言え、番組自体が20年以上続いていて、国民的アイドルグループとしてのSMAPのすべてが詰まったような番組。ファンの人にとっては永久保存版ともいうべきたまらない時間だったんでしょうね。
わたしはおそらく他のみなさんもそうであったように、ときどきチャンネルをかえながら番組を見ていました。
最近までSMAPには存在しなかったかのような扱いを受けていた森君も自然に総集編に登場していたり、稲垣メンバーや草彅君の不祥事まで取り上げられたり。
余談ですが、酔っぱらって近所の公園で裸になっちゃった草彅君。ちゃんと脱いだ服をきれいにたたんであったり、「シンゴー!」と叫んでご近所に迷惑かけちゃったり。お酒で羽目を外しちゃって警察沙汰になったことは決して褒められたことではありませんが、その様子が「草彅君らしい」と受け止められたりもしましたよね。
不祥事でイメージが下がらなかったアイドルも珍しいですよね…。そういうところもSMAPの偉大なところでもあるのかも。
楽しそうにじゃれ合う5人(時には6人)の若い頃の笑顔の映像や、最近の大人になった仕事人としてのSMAPの表情。
SMAPの28年間の様々な映像が流れ、そして、これまでの感謝を伝える視聴者への短い挨拶のテロップのあと、番組のロゴのかたちに花が飾られた白いセットの中で、タキシード姿で並ぶSMAPの5人。とうとう「世界に一つだけの花」が始まりました。
今まで解散したり消えていったアイドルグループやバンドは数あれど、解散が決まってからその最後の瞬間までを日本中に見せなければならなかったグループって他にはなかったですよね。
解散するにしてもこんなステージを見せる必要があるのかな、とか、解散が決まったのならそのまま契約が残っていた仕事だけ済ませてそっとSMAPを終えても良かったんじゃないのか、と無表情で淡々と歌い続ける5人を見ながら思っていました。
そして、ワンコーラス目のサビが終わり、ステージ中央に何かを託すようなしぐさをしながら4人が後方へ。中央で立ち続ける慎吾くんは、意を決したように力強く歌い出しました。
困ったように笑いながら
ずっと迷ってる人がいる
頑張って咲いた 花はどれも
きれいだから仕方ないね
ー「世界に一つだけの花」より
その瞬間から、中居君は涙をこらえるように上を向き、同じ歌詞を口ずさんでいました。
普通に読むと、花屋へ入った客が、目の前の花がそれぞれがきれいに咲いているから選ぶことができずに困っている、という歌詞ですが、もしかすると、今のSMAPのストレートな気持ちなのかな、と。
解散に至った事情は様々あるのだろうけど、それにはそれぞれ理由があり、周りが憶測でいろいろ勝手なことを言う間、SMAPは困ったように笑うしかなかったのかな。
名前も知らなかったけれど
あの日僕に笑顔をくれた
誰も気づかないような場所で
咲いてた花のように
ー「世界に一つだけの花」より
自分たちの気持ちだけではその存続すら自由にできないほど大きな存在となっていた国民的アイドルグループ・SMAP。
歌い終わった5人が深くお辞儀をし続けるのを見ながら、28年間ずっと、ファンや日本中を励まし続けてきたグループが、なんでこんな終わり方をしなければいけないのか、と、あまりにもままならない世の中の理不尽さを感じながら、初めて「世界に一つだけの花」の歌詞のほんとの意味を感じられた気がしました。
それと同時に、全く興味がないはずだったSMAPに対して、どうしてこんなにいろいろな感情がわき出してくるのだろう、と思いながら、きっと28年間、知らず知らずのうちに心の片隅にはSMAPがいて、ほんとはわたしもファンだったんだろうな、と今になって気づくのでした。
よく見ると、このジャケット、すごいですね。それぞれが美しい花なんだよ、と歌ったその上には数々のスポンサーの看板…!
こういうところがSMAPらしさなのかな?