香川県高松市沖に浮かぶ小さな島「男木島(おぎじま)」。
他の瀬戸内の島々と同じく高齢化の進む過疎の島ですが、瀬戸内国際芸術祭の会場になった影響などもあるのでしょうか、少しずつ移住する人や新しいお店などが増えてきています。
今回はそんな男木島に2015年秋にオープンしたカジュアルフレンチのお店「ビストロ伊織」をご紹介します。瀬戸内国際芸術祭の島めぐりの予定に是非加えてみてくださいね。
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「ビストロ伊織」のある男木島
「ビストロ伊織」は香川県高松市の男木島にあります。
男木島の場所はこちら。
高松沖数キロのところに浮かぶ女木島と男木島。その二つの島へ渡る「めおん」というかわいらしいフェリーに乗って高松港から40分弱。男木島は高松の中心部からも比較的行きやすい島です。
瀬戸内国際芸術祭が目的だと女木島とセットでまわる方が多いかもしれませんね。ですが、目立った観光地はありませんが男木島はとっても魅力的な島です。次の船までの2時間と言わず、4時間、6時間と是非ゆっくりしていってくださいね。
瀬戸内の過疎の島にオープンしたフレンチレストラン「ビストロ伊織」
人口数百人の男木島はほんの数年前まではひっそりと静かな島でした。
ちょっと食事をしようにも片手の指がかなり余るぐらいのお店しかなく、そのお店が閉まっていようものなら農協の売店で何か買ってしのぐしかない、というような感じ…。
瀬戸内国際芸術祭が開かれるようになってからは観光客向けのお店もポツポツ増えはじめました。ですがそのほとんどが普段は島外に住む人が会期中だけ、もしくは土日だけ営業する臨時のお店です。
そんな普段はひっそりしている男木島にフレンチレストランができる、それも芸術祭の会期中だけでなく男木島に移住した人が男木島でレストランを開くというのですから驚きです。
オーナーシェフの方は大阪で料理の修業をし、高松へUターンされていた方。たまたまネットで写真を見かけた男木島へ何度か通ううちに移住を決断、その上お店をお開くことまで決断されました。男木島ってそんな風に思わせてしまう不思議な魅力があるのですよね。
何もかも手作りの「ビストロ伊織」
さて、レストランの料理が手作りなのは当たり前ですが、「ビストロ伊織」のすごいところはお店自体が手作りということ。
2015年の夏頃から男木島へお邪魔するたびにトンカントンカン大工仕事をされていて、店舗ごと手作りするなんてすごいなあ!と思っておりました。
男木島は高松から近いとはいえやはり離島。街中のように工務店さんに頼んで重機を入れてちゃちゃっと、というわけにはいかないのです。
「レストランできたかな~」と思いつつ男木島へ行くたびにオープンの日が少しずつずれていっていて、途中ちょっとドキドキしましたがめでたく2015年11月に完成、オープンされました!
お店の手前にある休憩スペースのテーブルとベンチもすべて手作り。茶色と白に塗り分けられたテーブルセットです。
店の外も内装も、独特の色の塗り分け方がされていてとても個性的です。それにより手作り感を逆にうまく生かしてあって、どうやってデザインされたのかわかりませんが、自分じゃ思いつかないわ~としみじみ思います。やはり料理人さんはアーティストなのかしら。
手作りなので、入り口の扉を開けるのにちょっとコツがあったりしますが、それも楽しいですね。ちなみにお手洗いはありませんので、フェリー乗り場近くの交流館で済ませておきましょうね。
お店自体は広くはありませんが、内装を工夫されているので圧迫感を感じません。テーブルは4つ。イス席もありますので、正座が苦手な人も大丈夫ですよ。
島の食材を使ったカジュアルフレンチ
「ビストロ伊織」でいただけるのはカジュアルなフランス料理。主な営業はお昼間で、1,500円のプレートランチがいただけます。ディナーについては1週間前までに要予約です。
料理に使われる材料は主に男木島で採れた魚や野菜、果物など。その時々の旬の食材を活かして考えられたメニューです。
ある夏の日のプレートランチのメニューはこちら。
- 鯛の白ワインマリネと枝豆のピュレ
- 鯛と金糸瓜のパイ包み焼
- すずきのムニエル、ソース・フロマージュ
- 男木の恵みのサラダ
- 焼きたてのプティパン
どれもおいしかった~!
「鯛の白ワインマリネと枝豆のピュレ」はフレンチ風南蛮漬けというような感じのさわやかな味付けの鯛に枝豆のコクが加わって楽しい味わい。
「鯛と金糸瓜のパイ包み焼き」は鯛と金糸瓜(そうめんかぼちゃ)のクリーム煮の上にパイ生地をかぶせて焼いてあります。金糸瓜って酢の物でしか食べたことがなかったのですけど、こっくりした味付けにも合うんですね。かえってかぼちゃっぽくておいしかったです。
「スズキのムニエル、ソース・フロマージュ」については「あ~フレンチもたまにはいいわよね!」と思ってしまう濃い味わい! メニューには載っていませんでしたが、一緒に添えられたオムレツみたいなのもバターがきいててたまりませんでした。
サラダのドレッシングももちろんおいしかったですし、焼きたてのパンもおいしかった! パンがおいしくないとちょっとがっかりしますよね…。結構ボリュームのあるメニューですが、炭水化物が足りない方はパンのおかわりもできますよ。
飲み物はコーヒーなどのソフトドリンクはもちろん、アルコールもちゃんとあります。ワインはスパークリング、白、赤、数種類のボトルがメニューにありました。今回のメニューには白ワインかなあ…。あまりの暑さに熱中症になりそうだったのでアルコールを控えたのが心残り。
絶品デザートで幸せ!
おいしいランチの後はやはりおいしいデザートですよね。
「ビストロ伊織」のランチプレートにはセットでデザートが付いてくるのですが、このデザート、おまけ感覚のものではなく、量も味もちゃんとしたものなんですよ。
夏真っ盛りだったこの日いただいたのは「スイカのティラミスとレモン風味のマンゴーアイスクリーム」。
スイカのティラミスってあんまり食べたことないですよね。ほんのり赤いクリームとほろ苦いスポンジ生地が重ねられていて、口に入れるとちゃんとスイカの果汁を感じるから不思議。
ティラミスが少し味が濃い目な分、レモン風味のマンゴーアイスのさっぱりしているところも絶妙な組み合わせ。あっという間にいただいてしまいました。
食事の〆のデザートがおいしいと食後の満足感が違いますよね。ランチのセットとしてだけでなく、おやつの時間にデザートセットとしていただきたいなあと思うおいしいスイーツでした。
観光客だけでなく島の人たちにも愛されるお店
それにしても、小さな小さな島なのに本格的なナポリピッツアやフレンチが食べられるって、男木島ってすごい島ですね。
過疎の島にレストランなんて、と普通は思ってしまいますが、実際お店ができてみると来店するのは観光客だけでなく、地元の人たちもお客さんとして訪れているそうです。
島のおばあちゃまたちが女子会をしたり、今まで高松で買わないといけなかった家族の誕生日ケーキを「ビストロ伊織」で注文したり。
「ビストロ伊織」以外にも新しくできている男木島の飲食店には地元の人たちが食事に行ったりお茶をしに行ったりしているそうです。
島の人たちが気分転換をしたり、友達と遊んだりできる場所が増えて、大袈裟ですが島の方々のQOLが上がっているのではないのかな、と傍観者ながら思いました。なにが幸せなのかはわかりませんが、ずっと家に閉じこもりっきりじゃつまらないですよね。
それまで人が出ていくだけだった島に新しい人が入ってくるってこういうことなんだなあ、とおいしいご飯を頂きながら思いました。