序盤からあっさりとフルームが総合1位をキープしてしまって、「またかよ~!」とツールのつまんなさ(すいません)を彷彿とさせた今年のブエルタ。
ツールよりブエルタのほうがおもしろいんだよ! なんてこのブログでも煽ってしまいましたが、ほんと申し訳ない、わたし自身、ブエルタの存在自体を忘れてた日もありました…。
ですが! 実質最後のステージとなる第20ステージはあのアングリル!
なにをおいても見なければならないステージですよ!
とにかく坂道過ぎる! 第20ステージは地獄のアングリル峠ゴール
今回のブエルタ・ア・エスパーニャ、最大の見どころである第20ステージ。
最終の第21ステージはマドリードまでのパレードですので、今年最後の本気レースです。ですが、それ以上にアングリル峠を登りきってのゴールというところが見逃せない理由です。
アングリルというのはスペインの北のほうにある標高1600mほどの山です。
標高自体はそれほど高くはありませんが、とにかく勾配が急で、斜度が10%以上なんて当たり前。頂上に近くなってくると、20%も超えるような急こう配の道が続きます。
特に山頂付近は道も細くなり、そこへ大興奮のお客さんが押し寄せて、もう無法地帯。
普段は選手を正面から写し続けるバイクカメラもお客さんにさえぎられて、一番肝心の部分はヘリコプターからの遠景で見るしかないという、ああ、まさにこれこそブエルタ!
GoPro動画を見ても沿道にたくさんの観客があふれていて、この人たちいったいどうやってここにくるのかしら、っていうかどうやってここからいっせいに帰るのかしら、と思ってしまいますね。
それにしても、最近インスタ女子のあいだでGoProがはやってるらしいですね。
どっちかというと、アクションカメラって激しい動きをするスポーツをする男の子(おっさん?)向けというイメージだったんですけど、いやはや、世の中わからんもんですねえ。
有終の美を飾ったコンタドール
さて、今年で引退を発表しているコンタドール。
これまで、ジロ・デ・イタリア総合優勝2回、ツール・ド・フランス総合優勝2回、ブエルタ・ア・エスパーニャは総合優勝3回を果たしている、現在の自転車ロードレース界のヒーローです。
現役最後のステージレースとなった今年のブエルタ・ア・エスパーニャ。
地元スペインの大事なレースでもあり、何度かステージ優勝を狙っていましたが、体調不良などによりなかなか勝ちに行けず…ですが、最後の最後でやりましたよ!
激坂で脱落していく選手をしり目にひとり果敢に逃げ切り、最後にはコンタドールのトレードマーク、バキューンポーズを決めてゴール!
まさにコンタドールのためのような、なんだか絵に描いたようなレースでしたね。
フルームのそういうところが好きなんだ!
とかなんとか言ってますが、個人的にはコントドールはあんまり好きではないんです、すみません!
元々、わたしはアンディ・シュレック(と仲間たち)というコンタドールとはライバルの関係にあった選手が好きだったので、コンタドールはすごいなあとは思うのですが、それほど思い入れもなく…。
それより、第20ステージで一番萌えたのは最後のフルームの追い上げ!
いやはや、すごかったなあ…。
コンタドールは、上り坂で他の選手と駆け引きをしながら、加速したり減速しつつレースをする昔ながらのタイプの選手。
それに対し、フルームはとにかくパワーメーター(出力計)とにらめっこしながら、ペースを維持しながら淡々と自転車に乗り続ける現代的な戦法をとる選手。
第20ステージの終盤でも、コンタドールがグイグイ他の選手との差を広げ、一時は1分半ほど先行していました。それに対し、フルームは自分のペースを保ったまま無理して追いません。
1分半というタイム差は、総合成績(第1ステージからの合計タイム)ではフルームの1位を脅かすものではないので、まあ、そのままコンタドールを追わなくとも構わないっちゃ構わないわけです。
Jsportsの中継でも、フルームは追う必要がないから…等々解説をされていました。
ですが、わたしはわかってましたよ、フルームがそんなやわな男じゃないことを…!
他の選手だとそのまま、無難にレースを終えて総合優勝を確定させたかもしれませんが、フルームは違いました。
残り数キロというところでアシストのプールスとともにペースを上げ、どんどんコンタドールとの差を詰めていきます。
最終的に、コンタドールを捕らえることはできませんでしたが、17秒差までタイム差をちぢめてゴールしました。
普段はほんとに温厚そうで礼儀正しいフルーム。
ツール・ド・フランスの表彰式では事前に用意したメモをひたすら読み上げるような律儀なフルームですが、いざレース本番となると、まるで別人。
自転車ロードレースでもステージレースと呼ばれる数日間にわたって行われるレースでは、重要なのは合計の走行タイムであって、日によっては全力を尽くして勝たなくてもいい場合もあります。というか、いらないところで頑張らず力を温存するほうがいい場合も…。
ですが、フルームは、今日は別にもういいじゃん…! というところでも勝ちに行くんです。
普段の淡々とした走りとは裏腹な、ここぞというときに垣間見える闘志。そんなフルームを見ていると、ああ、この人はほんとに勝ちたい人なんだなあ…としみじみ感じるんですよね。
ただフルーム本人は、アシストのプールスを最後に勝たせたかったようですね。
そういえば、以前も、ツール・ド・フランスのときだったか、すごく献身的に尽くしてくれたアシストのリッチー・ポートをゴール直前で勝たせようとしていたシーンがありました。
レースにはシビアながらも、そういう義理堅い一面のあるフルーム。レース展開は正直つまらないことが多いけど、好きな選手です。
さて。
とにもかくにも、2017年のブエルタ・ア・エスパーニャは実質これでおしまい。
山ばっかりの過酷なブエルタ。選手のみなさん、お疲れさまでした!