「ああ、今年のツール・ド・フランスも終わったな・・・。」なんてアンニュイな感慨にふけってから約一ヶ月。
スペインからさらに暑い夏「ブエルタ・ア・エスパーニャ」がやってきましたよ!
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そもそも「ブエルタ・ア・エスパーニャ」ってなんぞ?
「ツール・ド・フランス」と言えば、自転車ロードレースの最高峰。自転車に興味のないかたでも名前くらいは聞いたことあるかもしれませんよね。
けど「ブエルタ・ア・エスパーニャ」はどうでしょう。たぶんあまり耳慣れないレース名だと思います。発音しにくいし。
まずは「ブエルタ・ア・エスパーニャ」についてざっくりご紹介します。
三大グランツールの一つ「ブエルタ・ア・エスパーニャ」
自転車ロードレース(専用の試合会場ではなく公道で行われる自転車レースの種目)の試合の中には、実は様々なものがあります。ざっくり分けると次の二種類。
- ワンデーレース:一日で試合が完結するもの。クラッシックレースなんて呼ばれるときもある。世界選手権やオリンピックもこのタイプ。
- ステージレース:何日かにわたって行われる試合。一週間前後から長いもので三週間。出場選手全員が期間通して参加し、全期間のタイム合計で順位を競う。
そして、後者のステージレースの中には「世界三大グランツール」と呼ばれる特別なレースがあります。
- ジロ・デ・イタリア:春に行われるイタリア一周レース。通称「ジロ」
- ツール・ド・フランス:初夏に行われるフランス一周レース。通称「ツール」
- ブエルタ・ア・エスパーニャ:盛夏に行われるスペイン一周レース。通称「ブエルタ」
*厳密にはいわゆる一筆書きの一周ではなく、また他国を走ることもあります。
いずれも三週間にわたって行われる大きなレースで、プロチームと呼ばれる自転車ロードレースの最上位カテゴリーのチームは出場が義務づけられています。
その中でも「ツール」はかなり大規模な試合で、全世界のテレビ観戦者数は、夏のオリンピック、サッカーワールドカップに次ぐとも言われています。
↑とにかく華やかなツール・ド・フランス
ダカールラリーも主催するASO(Amaury Sport Organisation)という運営団体が潤沢な資金のもと行うレースは、ヘリコプターを使った美しい空撮画像や、ITなどの最先端の技術も惜しみなく取り入れ、まさに洗練されたビッグイベント。
露出も高いので、スポンサーからの資金により運営している自転車チームは、それこそ全力投球で試合に臨みます。もちろん、そこで勝利を挙げることの価値は何ものにもかえられません。
ですが、そんなもっとも有名なレース「ツール」がグランツールの中で一番過酷でハードなレースかというと、実は違うんです。ちょっと意外。
ツールは長丁場のハードなレースであることには代わりありませんが、やはり洗練されたレース。
コースとなる道路は、ツールに向けてきれいに舗装し直されているところが多く、また、ピレネーやアルプス山脈の森林限界を超えたようなところを走ったりもしますが、比較的道幅も広く、斜度も瞬間的には急なところもありますが、まあ、自転車乗りの人なら一般人でも登れなくはありません。
ですが! ツール以外の二つのレースは、それはそれは過酷なレース。
春先の「ジロ」は、まだ雪が積もっているような山道を走らされたり、レース後の移動が毎日何百㎞とあったり、また、「ブエルタ」では灼熱の真夏の太陽の下、どこまでも続くオリーブ畑の中を延々と走ったり、バイクも登れないような急傾斜の山道を濃霧のなか走り続けたり、と純粋に試合という点ではツールよりも遙かに過酷です。
世界的な知名度とは裏腹に、イタリア人だとツールよりジロを優先させる選手もいたりします。
かくいうわたしも、山岳ステージの激しさから、実は今回のブエルタはツールよりも大好きなレース。
きれいなツールも好きなんですが、周到に準備された会場で行われる他のスポーツとは違うロードレースの醍醐味を味わえる気がするんですよね。
スペインのレースはとにかくゆるいよ!
↑ブエルタには毎年テーマソングがあって、微妙にもっさりしているところがにくめない感じ
そんな過酷なレース「ブエルタ・ア・エスパーニャ」ですが、そのワイルドさ以外にも他のレースにない魅力があります。
それは、その運営のゆるさ!
自転車ロードレース自体、一般的なスポーツと比べると、そのルールがゆるく運用されているスポーツなのですが、ブエルタのゆるさはそれ以前の問題。
今年のブエルタでさっそくありえへんと思ったのは、チーム名の登録。
aqua blue sportというチームが参加しているのですが、本来はsportなんですが、sportsと複数形で登録されていました。ありえない!
他にも、いろいろと段取りの悪いところもブエルタの特徴。
レース終了後の表彰式の際、中継の画面にその日の成績が表示されるんですが、その結果と表彰されている選手が一致していないことは日常茶飯事。
レース中のタイム表示もけっこうめちゃくちゃだったりしますし、ゴールしたときの表示も、普通はゴールラインを超えたところで時計が止まりますが、ゴールラインを超えてしばらくたったところで計測が止まってレース結果として表示されたりと、とんでもなくゆるゆるです。
他にも、コースの過酷さから来るゆるさもあります。
細くて急勾配の山のコースは、ときにはバイクでの走行も難しいことがあり、いったんなにかの拍子でカメラバイクが停止すると、そのあと再出発ができなくなったりすることもしばしば。
2台あるカメラバイクの両方が動けなくなり、ひたすら誰もいないゴール地点が何十分も映され続けたり、そもそも悪天候のせいで中継画像自体がこないときもあったり。
そんなブエルタの中継を見ていると、「細かいことなんか、もうどうでもいいや。」と妙におおらかな気持ちになって、ああ、スペインっていいな、となぜか思ってしまうのです。
今年のブエルタ第1ステージはチームタイムトライアル(TTT)
さて、そんなゆるくて楽しいブエルタ・ア・エスパーニャ。今年の第1日目はチームタイムトライアル(TTT)でした。
タイムトライアル(TT)とは平坦基調のコースを順番にスタートし、とにかく速いタイムでゴールしたものが勝ち、という他の選手との駆け引きなしの単純に体力とテクニックの勝負。それをチームごとに行うというかなりシビアな試合形式です。
チームの9人全員でスタートし、最終的に5人目の選手のゴールタイムがチーム全体のゴールタイムとされます。
途中、順番に先頭を交代しながら風の抵抗による体力の低下を分散しながらレースを進め、脱落する選手が出たとしても、最後には少なくとも5人がばらけずにゴールする必要があります。ちょっとでもばらけちゃうと風の影響でどんどんバラバラになってしまうんですね。
自転車ロードレースは、試合運び自体はチーム戦で行われるのですが、成績は基本的に個人で計算されます。どんなにチームが団結してエース選手を勝たせたとしても、表彰台にのぼれるのはエースひとりだけ。
ですが、TTTだけは、その日の表彰台はチーム全員であがれます。
チームの足を引っ張ったらどうしよう…と、選手はとんでもなくプレッシャーを感じるそうですが、勝ったときの喜びはひとしお。見てるほうもうれしくなちゃう表彰式です。
今年の第1ステージの優勝はBMCレーシングチーム。15kmと短いコースでもあり、特にアクシデントなくTTTの上手なチームが順当に勝利した、という感じです。
総合1位はいつもニコニコなローハン・デニス
ステージ優勝はチーム単位でしたが、第1ステージ終了時点の総合順位は個人単位。BMCの中で一番初めにゴールラインをまたいだローハン・デニスが1位となりました。
ローハン・デニスはオーストラリア出身の27歳。いつもニコニコしていてかわいらしいんですが、今年の表彰式でアップになったデニスをみてびっくりですよ!
なんかすごく肌が荒れてる!っていうか小じわが目立ち過ぎ!
数年前は、アイドルのようにかわいらしかったんですけど、常に紫外線にさらされてるからですかねえ。もうちょっとお肌のお手入れをしていただきたいわ…!
ブエルタでも頑張るGoPro!
アクションカメラのGoPro。ブエルタでもいい仕事してますよ!
TTTはずっとハイスピードで走っているので、臨場感がたまりませんね。とってもスリリング。
ブエルタ独特の激坂コースなんかではどんな動画が見られるのかなあ。楽しみ。